小説 サイバーパンク3001 -路地裏のダンサー

エピローグ




◆エピローグ
〜作戦から1年後〜

夕陽が調整され美しいグラデーションを描くようになり、カーラは丘から街を眺めるのが好きになった。
マシーナの手術の為に取っていた長期休暇が終わって、タワー警備責任者としての仕事が始まれば、当分この風景は拝めないだろう。 目に焼き付けるように空をながめる。 
以前より気持ちが穏やかになった気がする。
マシーナの手術が無事終わった事、
そしてヘラが最後の日までマシーナと一緒に過ごすことが出来た事。
罪の意識を背負い運命に翻弄されたが、タワーで交わしたヘラとの約束は果たす事ができた。 
そして1年前のタワーの意思との遭遇。誰にも言う事は出来ないが、あの時――
「カーラ!遅れてすまない 」公園に保護課の公用車がとまって、窓からシエンが呼んだ。

カーラは少し微笑むと、小走りで助手席に乗り込む。
車はオレンジ色の丘を降りて行った。


「うん、学校の前のベンチで待ってるね。じゃあ、カーラも気を付けて。」電話をしまうと、ちょうどルークも仕事を
終えてきた。
髪は短くなりスーツ姿で大人びたが、何の仕事なのかは教えてくれない。きっと怪しい映像を作っているのだろう。
「カーラ少し遅れるって。」
「また?もうAI 車でいいのに。」ルークはカバンを下ろしがっくりとしてベンチに座った。
「それカーラに言ったら駄目だよ。めちゃ機嫌悪くなったから。」
「知ってる。あと5度目とか禁句・・。」
「マジで?5度目?」マシーナが目を丸くして驚く。
「自業自得なんだ。手動免許じゃないと嫌なんだって。」
 二人はため息をついた。腹が鳴る
「先にドーナッツでも食べよ?よろしくお願いします!」マシーナはルークを拝んだ。
「いやマシーナの方がお金持ちじゃん。」
「無いよ」
「なんで?」
「将来の為」
「それは無いとは言わない。」
「いいの。外の世界に出るには、それなりの資金が必要なの。それに私のお金じゃない。ヘラが残したお金よ。
 あとはカーラの分。」
「僕のは?」
「は?一緒に外に出るならいいよ。」マシーナが天井を指す。
「ええ・・外の世界かー。」ルークは天井を見上げた。

「たっぷり悩んで。まだまだ時間はあるし。とりあえず食べにいこうよ」
二人は立ち上がり、高架下のドーナッツ店へ向かって歩き出した。


◆外の世界
灰色の空から水が降っている。雨と呼ばれた天気はここでは見られない現象だった。
広大な地上で巨大な先人の装置がゆっくりと回り、その間を歩き続けている。

(Q層もR層も上層にとられた。カインの目覚めも当分先のようだ。嵐が来る前に先人の遺産へ向かおう。)
「どこまで潜ればいい?」
(S層でいい。設備もアンドロイドも充実して分離システムがあるらしい。そこで体制が整えばTへ向かう。)
「ダストシュートから侵入できるだろうか。」
(いや逆に地上ダクトを通って山脈側へ向かう。おそらく、すべてそこにたどり着く。)
「了解。」
コウは大きなリュックを背負い直す。山脈へ伸びるダクトを眺めた。この先を知る者はまだいない。
コウは新しい世界への旅立ちに期待と喜びを感じR層に未練もないが、ふと外殻で戦った仲間の事を思い出した。
   「みんな元気かな。」
   (また会えるさ。向こうから来るよ)
   「マシーナやシエンも?」
   (うむ。  マシーナは確実だな。)
   「うんうん。そうだね。楽しみだ。」

コウはモップを持ち上げダクトにむかって大きく振り下ろした。 





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